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エンジニアとして真に成長するには?──技術スキルだけじゃない、"すごいエンジニア"が大切にするマインドセットとは

【15-E-5】技術を超えた成長へ:エンジニアとしてのマインドセットと学びの旅

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 「技術スキルの習得だけでなく、エンジニアとして真に成長するためには、マインドセットが非常に重要」──そう語るのは、国内45名の「Japan AWS Ambassadors」「AWS Top Engineers」の両方に選ばれ、現在はAWSをメインとしてソリューションアーキテクトとして活躍するNECソリューションイノベータ株式会社の田中拓摩氏だ。エンジニアとしてのキャリアの転機となった出会い、そして大切にしているという2つのマインドセットについて語った。

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約5%のトップエンジニアになるためには、技術よりマインドセット

 「テクノロジーとイノベーションで人と社会が輝く未来を創るバリュークリエーションカンパニー」を標榜するNECソリューションイノベータ株式会社。田中氏は、同社でAWSのソリューションアーキテクトとして、大型IoT案件や官公庁の予約システム、政令指定都市AWS化などのプロジェクトに携わってきた。現在、勤務地は大阪ながら、テレワークも多いことから、出身である滋賀県の琵琶湖近くに居を構える。

NECソリューションイノベータ株式会社 ソリューションサービス事業ライン第二PFSI事業部第一グループ 田中拓摩氏
NECソリューションイノベータ株式会社 ソリューションサービス事業ライン第二PFSI事業部第一グループ 田中拓摩氏

 エンジニアとしては当初、医薬品卸の販売・営業支援システム開発に携わり、大規模SAP基幹システムのAWS移行をきっかけにAWSを学び始め、さまざまなプロジェクトを経験してきた。2019年からは「Japan AWS Top Engineers」、2020年から「AWS Ambassadors」に選出され、現在はAWSにどっぷり浸かって仕事をしている。なお「AWS Ambassadors」は、AWSに関する卓越した技術力、ソーシャルメディアを通しての発信などを評価するもので、2023年度は日本で45名、世界でも298名が選出される。いわばAWSのトップエンジニアとして認められた存在だ。

 田中氏は、「なぜ自分が選ばれたのか」と戸惑いつつも、「他のアンバサダーとの交流で感じたことも含めて、AWSエンジニアの中で何が違うのかを考えてみた。技術的なレベルならば、社内には自分よりも優れた人はたくさんいる。でも、多分そこではないのだろうと思う。いわば技術を超えて成長するためのエンジニアとしてのマインドセットにあるのではないか」と語る。

 マインドセットとは、「人間が持つ無意識の思考パターン」であり、固定観念や思い込み、物事を捉える時の「思考のクセ」を意味する言葉だ。普段の何気ない行動は、このマインドセットによるものが多い。その行動の積み重ねにより、選択や身につくものが変わるため、マインドセットの持ち方によって成長度合いに大きく影響してくる。裏返せば、成長度や成長率を上げるにはマインドセットを変えればいいわけだ。

 田中氏がこれに気づき、実践し始めたのは30代前半の頃。さまざまな本を読んだり、起業家や経営者のセミナーや集中講座に行ったりして、多くの人の話をきくようになった。ある起業家が主催するセミナーの初回で強調して言われたのが、「情報社会なのでビジネスのテクニックについてはググれば分かる。ビジネスをする上で大切なのはマインドセットがすべてといって過言ではない」という言葉だったという。それをきっかけに、マインドセットの重要性を実感し、特に2つのマインドセットを大切にするようになったとのことである。

すごいエンジニアになるためのマインドセット1つ目は「とっととやれ」

 ある起業家のセミナーの初回に渡されたのが、マーケティングやブランディングなどのコンサルタントである広岡勝時氏の「日めくりマインドセット」というカレンダーで、そこには物事の捉え方・考え方が書かれている。広岡氏が主催する「目指す自分、なりたい自分に『成れる』会」での講義内容や実践プランなどを有志がまとめたものだ。

 31個書かれているマインドセットの中でも1日目が一番重要と渡された。田中氏は今も机に置いているが、見ているのは1日目の「とっととやれ」のみでこの1日目がめくらない日めくりカレンダーになった。つべこべ言わずに、失敗を恐れず、逃げずにとっととやれ、やればできる。成功している人は誰よりも失敗し、行動している。何よりも「とっととやる」ことが大切、というわけだ。

「日めくりマインドセット」カレンダー
「日めくりマインドセット」カレンダー

 田中氏は、「AWSは日々大量のアップデートや新サービスに対応するため、大量に勉強する必要がある。資格の取得についても勉強するのは大変だ。『勉強を始めたが、なかなかできない。どうしたらできるようになるのか』と相談を受けるが、その際にはまさに『とっととやれ』と言われてきたことを思い出す」と語る。

 田中氏にとって最初のAWS案件は、AWS資格を取ったばかりの2016年。いわば教習所で免許が出た直後のタイミング。「基幹システムがAWSに載せられるのか」という時代に、「5万SAPSという大規模なSAP基幹システムのAWS移行」というプロジェクトに参画することになった。

 ダウンタイムはわずか15時間、シンガポールとDRしてほしい、ライセンスの都合でOracleからSQL Serverへマイグレーションしてほしい、などリクエストは多数。さらに移行前からシステム性能に問題が多数ありこちらもクリアする必要があった。AWSへの移行可否の判断のために与えられた検証期間はPoC2カ月。しかしながら、後続のスケジュールを考慮すると、2週間で環境構築とDBマイグレーションを行い、残り2週間で検証と報告を行うといったスケジュールになり、実質1カ月で検証を終える必要がある状況だった。

 「しかも全員AWS初心者で資格持ちは私だけ。それを乗り切った人間から見れば、しっかり勉強して上位資格も取っている人が躊躇するのがわからない。『とっととやれ』と言いたい」と田中氏は檄を飛ばした。

AWSの資格を取得したばかりの頃に対応したプロジェクト(当時の状況)
AWSの資格を取得したばかりの頃に対応したプロジェクト(当時の状況)

 誰もが憧れる「すごいエンジニア」は、エンジニア全体の約5%しかいないという。田中氏は「そんな存在になりたいのなら、とにかく『とっととやれ』」と念を押す。

 例えば、ラスベガスで開催されるAWS社主催の学習カンファレンス「AWS re:Invent」に行くとしたら人あたり100万円ほどの旅費が掛かる。「これに行くにはどうしたらいいのか」という問いに対して、田中氏は「Outlookの予定表に入れたら、行けます」「事業部長に言ったら、行けます」と答えるという。

 たしかにほとんどの人が「そんなに簡単に行けるはずがない」と思うだろう。8割がそうなら、「そうかもね」と思う人が2割、さらにその2割がOutlookに記入する。つまり、約4%が言われたことに対して「とっととやる」を実践したことになる。田中氏は「すごいエンジニアになるのも同じこと」と語り、「AWSのイベントに『行きたいな』と思っても、それを実行する人は少ない。でも、実際に予定を入れた人は実際に行けている。だからこそ、すごいエンジニアになるためにも思いついたことをすぐに行動に移すことが大切」「すごいエンジニアは5%程度と言われる中、これだけでTOP 4%に入れる」と強調した。

 同様に「資格を取る」ことについても、具体的な勉強方法などについてリサーチするより、まずは受験日を予定表にいれるのが大切だ。田中氏がこの話をして、実際にそれを実践した人は1年後に12の資格を全て達成していたそうだ。

真っ先に受験日を予定表にいれた人は、1年間で12の資格を取得した
真っ先に受験日を予定表にいれた人は、1年間で12の資格を取得した

すごいエンジニアになるためのマインドセット2つ目は「あらゆる責任を引き受ける」

 2つ目に田中氏が大事にしているマインドセットは、米国の起業コンサルタントであるダン・ケネディ氏の「人生のコントロールをしたかったら、責任を引き受けろ」だという。

 人生にはさまざまな判断がつきもの。しかし、会社の中でも意外と判断していない人は少なくない。その理由は「責任を取りたくないから」だと指摘する。しかし、逆に言えば責任を取る意思があれば、どんなことでも自分で決められる、判断できる、自分でコントロールできることを意味する。

 つまり、責任を取れる人は、判断できる人であり、指示されたこと以上のことができる。すると、どんどん仕事ができるようになり、プロアクティブに動いて仕事をこなせるようになっていく。一方、責任から逃れようとする人は、常に言われたことしかできなくなり、さらに力もつかず、言われたことすらできなくなっていく。

 田中氏は、「自分の責任と引き受けられる人は、『他人は変えられず、変えられるのは自分だけ』と考えている。他人や環境は変えられず、コントロールはできない。しかし、自分が責任を引き受け、自分が変わるのであれば、何事でも変えられるというわけだ」と語り、松下電器創業者である松下幸之助氏の「雨が降っても自分のせい」という言葉を紹介。「自然現象すら自分のせいと引き受ける。自然現象は変えられないが、それすらも自分のせいと引き受けることで、あらゆることがコントロールできるようになっていく」と繰り返した。

 たとえばメンバーがミスした時、「自分のせい」と思うことで「この場でレビューしておけばよかった」「仕組みを変えておけばよかった」と反省材料として考えることができる。そして実際に行動すれば、メンバーのミスを減らし、コントロールできるようになっていく。するとメンバーへの怒りもなくなっていったという。

マインドセットのために、言葉の使い方に工夫する

 そして、田中氏は「大切にしているマインドセットはこれまで話した2つだが、言葉の使い方として気をつけていることもある」と語り、次の言葉によるマインドセットについて紹介した。

「頑張ります」→「やります」

 「頑張ります」と言うと、自分のハードルよりも高いところを目指す印象があり、「自分にはできない」という思い込みを作ってしまうのではないか。そこで、どんなに難しいことでも「やります」と言い切ることで「できる」と思えるようになる。

「自分しかできないことを増やす」→「自分しかできないことを減らす」

 技術の移り変わりが激しい中で、自分にしかできないことを増やすと、その技術に縛られて、次のトレンドに移れない。そこで、人に引き継いだり、教えたりして、自分以外でもできるようにしていく。自分が身軽になれば次の成長に移れるという考え方だ。

「技術を習得する」→「技術を習得する感覚を習得する」

 生成AIをはじめとるさまざまな革新的な技術が登場する中で、「この技術ならこのくらいで身につけられる」という感覚があれば、必要になったときに習得すればいい。技術力が心配な人は、あれもこれもと勉強しがちだが、習得のステップや段取り、感覚が身につけば取捨選択して、今やるべきところに集中できる。

「初心者です」

 田中氏いわく、「初心者です」は"逃げ"に近い言葉だと指摘する。もちろん初めてのことは誰にでもあるので、「これから力を入れていきます」という言い方をしている。

 最後に田中氏は、「一番話したかったことは、『とっととやれ』と『責任を引き受ける』の2つ。このセッションを聞いて、すぐやる人はトップエンジニアの約5%の中に入ることができるはずだ。ぜひとも、今すぐ行動してほしい」と改めて強調し、セッションのまとめの言葉とした。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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