はじめに
ITシステムにまつわるビジネスの課題として、「開発期間の短縮」と「システム資産の存続」が挙げられます。
開発期間を短縮することは、開発コストを下げるだけでなく、開発期間におけるビジネスの機会損失の低減にもつながります。また、システムは一度作ってもハードの老朽化や陳腐化によりリニューアルが必要となりますが、システムが依存する機器やOSによっては、買い替えのコストが高くつくこともあります。
そこで本稿では、システムの開発から運用までの距離を縮め、システム資産を未来へ継続させるという2つの視点で、よきパートナーとなりうるツール、FileMakerの「インスタントWeb公開」機能を紹介したいと思います。FileMaker Pro だけでも、作成したデータベースをWebに公開し、Webブラウザで最大5ユーザまでが同時にアクセスできます。さらに、FileMaker Server Advancedを利用すれば、Webブラウザで最大100ユーザまでが同時にアクセスできるようになります。
以降、FileMaker Server Advancedの導入を前提に、簡単なシステムのサンプルを例にとり、前編でシステム機能の概要や必要となるインフラストラクチャ、ユーザの操作の流れなどを紹介し、後編で具体的な開発や設定の手順などを紹介していきます。
インスタントWeb公開とは
「インスタントWeb公開」は、インスタントの名を裏切らず、簡単な操作や設定で、データベースと連動するWebアプリケーションをすばやく提供できる機能です。FileMaker Pro上で定義した画面レイアウトや機能をそのままWebのインタフェースで実現するため、詳しいWebの開発知識がなくても利用できます。
また、ODBC接続による外部のSQLリレーショナルデータベースとの連係(ESS)もサポートしているため、基幹システム上で管理されている各種マスタ情報と同期を取ることなどもできます。これにより、部署レベルでのみ必要とされるような小規模システムも柔軟に開発できる小回りのよさも持ち合わせています。
筆者は、FileMakerのインスタントWeb公開を、走りながら(運用)考える(開発)を実現する理想のビジネスツールと考えています。
想定するシステムの概要
本稿で想定するシステムの機能や目的は次のとおりです。
- 顧客へのサービス向上を目的とした、顧客の情報や応対履歴を複数部門で共有する「簡易CRM(Customer Relationship Management)」を構築する
- Webブラウザを利用してアクセスすることができる
- 社員情報や顧客情報など、あまり更新することがなく重要な情報は、基幹システムのデータベース(MySQL)を外部SQLデータソースとして利用し、マスタ情報と定期的に同期を取ることで、一元管理できるようにします
FileMaker Proは、MySQL以外にもSQL Server 2000/2005/2008、Oracle 9i/10g/11g等のリレーショナルベータベースに接続することが可能です。最新動作環境はメーカーサイトを参照のこと。
簡易CRM上で利用できる主な画面は、次のとおりです。
顧客リスト
顧客一覧を会社名・フリガナ・電話番号で検索することができ、選択すると詳細画面へ遷移します。外部のリレーショナルデータベースのテーブルを参照しています。
顧客詳細
顧客ごとの詳細画面です。画面下部のポータル部分には、複数の顧客サポート情報を最新順で表示します。また、新規顧客サポート情報は、追加ボタンを押すと表示される顧客サポート詳細更新画面で登録することができます。修正も行うことができ、目的の顧客サポート情報を選択し、顧客サポート更新画面へ遷移して行います。
顧客詳細の更新
関連部署・表題・内容の表示、更新が行えます。日付・登録者は、登録日+ログイン社員として自動転記します。メールボタンをクリックすると、顧客サポート情報を管理者へメールで報告することができます。
顧客サポートリスト
顧客サポート情報を一覧から日付・登録者・表題・内容で検索できます。特定の顧客を選択すると、顧客サポート詳細画面へ遷移します。
顧客サポート情報を登録した社員の社員番号および氏名を自動的に記録するには、社員情報を最新に保っておく必要があるため、基幹システムで一元管理されている社員マスタと定期的に同期します。FileMaker Server Advancedの機能である外部SQLデータソースを参照する機能と、定時にスクリプトを自動実行する機能を使えば、基幹システムのデータベース(MySQL)の社員マスタから社員番号、氏名、アクセス権といった社員情報を引き出し、FileMaker上のアカウント情報/アクセス権を、夜間に自動更新することができます。




